着物ブランドirocaを徹底解剖

着物ブランドirocaを徹底解剖


クリエイターズコラボしているブランド「iroca」を徹底解剖するべく、今回デザイナーの石川成俊さんへインタビューさせていただきました。

irocaとは着物デザイナー石川成俊が新しい日本の美を追求するブランド。2001年より、独創的なデザイン・一点物の手作り帯留めなど様々な形でブランド展開。ロンドン V&A museumにオリジナルデザインの着物等一式が永年収蔵される(Kimono:Kyoto to Catwalk展にて一般公開)
本来、日本人が持っていた優れたデザイン性を継承しつつ、今の時代に生きるからこそ表現できる新しい日本の美を求めて年齢にとらわれず、性にとらわれず色を身にまとい、艶やかに、美しく、強く…



圧倒的な世界観で見るものを魅了するirocaのキモノたち。それらはどのような思いから生み出されたものなのか伺いました。

ー石川さんの考えるキモノ論を教えてください
みんなirocaの着物の柄見るとびっくりするけど、実は大正後期~昭和初期とか着物がファッションの最先端だった時代があるワケです。その頃は世相を反映して反戦をテーマにした柄もあればとにかく自由な表現がいっぱいあったんですね。しかし残念なことに戦争が起こってしまったことで、そういうものが一切なくなってどんどんつまんない方向にいっちゃって…僕が着物を始めたきっかけっていうのはその当時のスピリットをもって、かつ現代のモチーフで、言葉が強くなってしまうけど「これが本来の着物の姿だよ」ということを伝えたかったのです。
同じようなことを言っているのがモダンアンテナの平山さんで近いものを作っていたりします。着物ってそんなに堅苦しいものじゃなくって本当は自由なんですよ。「こんなもの着物じゃない」っていう方もいますけど歴史をふまえると「そうかな?」と思っちゃいます。
僕はルネサンス(=再生)という気持ちが強くて、そういう思いでやっています。テーマとしては新しい着物の美と表現していますが、裏テーマとしてはルネサンスです。芯となるスピリットは昔、ただ現代の色やモチーフ、デザインを用いてちゃんと今の若い方が原宿でもどこでも普通に街中を歩いていても違和感のない図案にしたいのです。
もちろん古典は否定していません、それはそれであっていいと思っています。
しかし着物はどんどんつまらない方向にいっちゃうのでこれからを担う若者にこそ着て欲しいですね。

それこそキモノハーツさんのお客様でヴィヴィアンのロッキンホース履いてirocaの振袖着たりする人たくさんいますよね!
なんとも嬉しい光景です。
僕は日頃ラフォーレ原宿や新宿マルイなどのファッションエリアで出店していたりして、呉服エリアではやっていなくて。
いわゆる最先端の洋服たちと勝負したいんです。
着物って可能性秘めていて面白いんですよ本当に。
こんな大きなキャンバスですし、着物ほどデザインしがいのあるものはないと思っています。


ー最初のコラボ振袖について聞かせてください
まずキノコのモチーフがやりたかったんです。このモチーフを生み出すこと自体に最低でも一か月はかかるんですが、とにかくやってみたい気持ちが強くて。それができてから本番の全体デザインに取りかかります。今回はキノコの森に妖精が住んでいたら面白いな、そんな気持ちから生まれたデザインです。個人的にティンカーベルが好きで妖精を森で自由に遊ばせたいなとか考えながら作っていました。キノコの胞子なんかも飛ばしたりして雰囲気も出しつつできたものです。

ー珍しいデザインですが周りからの反応はどうでしたか?
外国人からのウケが良くて、話を聞いてみると「こんなサイケデリックなデザイン見たことがない」と言われました。特に原宿とかにやってくる感度の高い海外の方には魅力的に映るみたいです。
あと実は隠しネタとしておじさんみたいな妖精…正しくいうとノームという森の妖精が一人紛れ込んでいます。これを見つけてくれた方から反応があったときは「お!」と思いました。ぜひ皆さんにも探してみてほしいです。
評判がよかったし僕の中でも気に入っているから亜種でこのキノコを横に連続柄にした新作も作りました。こういう遊び心ある、少しとがったデザインは昔から東京や福岡で人気ですね。




ー次の年はこれまた珍しいクジャクのモチーフでした

何十年とやってきて「いろんな意味を重ねていこう」みたいなことばかりにこだわっていた時期があります。そこで着物のデザインを始めたあの頃、初心に帰って生き物・生物の美しさをシンプルにどこまで美しくできるかにかけて作りたいという気持ちがあり今回クジャクの羽だけにテーマをしぼりました。
この羽ですが一本一本描いていて、その一本ごとに根元の白色から先端の紺色までグラデーションを変えているため全部が違っています。

ー1本1本ずつですか!?ビックリです!
irocaはよく派手といわれるけど"ただ派手にするだけ"なら割と簡単なんです。そしてそういう華美なデザインに対して品がないと苦手意識を持ったり、下品だと感じる人がいることも知っています。では品を出すにはどうしたらいいかと考えて"繊細に描く"とゴールに辿り着きました。
ち密かつ繊細に描くことで着物のダイナミズムを出すことができたら上品な着物になります。どんな派手な色を使っても負けないです。むしろ繊細な図案の中にネオンカラーを落とし込むからこそ生まれる品格の部分を一番気にしてつくりました。品を失ってしまったら終わりです、そこを大切にやってきました。
例えば昔の着物の図案で言うと抽象的な蝶々がありますが、ここまでリアルに描くのをはじめたのはirocaが初めてです。リアルゆえのダイナミズムと繊細さ、それが現代着物のデザインだと僕は思っています。その道の生き物のプロが見ても許せる図案であって欲しいと思って取り組んでいますし、水族館や博物館に置いていてもおかしくないレベルまで持っていきたいと思っています。



ーirocaといえばクラゲというイメージもあります
僕が20歳ぐらいの時に実際に水槽で飼っていた経験があるんですよ。経緯としてはむかし舞台役者をやっていたのですがそこは舞台美術にこだわっていた劇団でした。たまたま昭和天皇のご研究を見に行くことがあり、そこでクラゲが水槽の中で泳いでいました。「これを舞台に使いたい」と思って調べたところ、どうも飼育が難しそうで…ではそのご研究の展示会をバックで支えていた人は誰なんだろう?と思って調べると江ノ島水族館だったんです。僕は勉強させてくれ!と江ノ島水族館に直談判しまして、どうにか飼育を教えてもらうことができました。そのような経験があるのでクラゲへの思いが強いんです。余談ですがその時の話をその先生が書籍に一文、二文書いてくれていました「こんな子がいて、飼育に成功したようですよ」と(笑)

クラゲのモチーフも最初にやったのは僕で、数えると今年ちょうど10周年なんです。波間に揺蕩うミズクラゲを着物を海にたとえて泳がせてみました。その透明感のある美しさと水の流れに身を任せながらゆらぐ姿が安らぎと刺激の両方を与えてくれる存在、青紫の海に3色のネオンカラーに発光するミズクラゲ…そこに斜めに横切るように入る3色のネオンカラーは街のネオンサインが海に写り込むイメージです。バックにはクラゲの水管をデザインしました。またクラゲは英語でムーンジェリーというので右肩にムーン(月)を描いています。
色が滲み出すような香りたつような強い色彩、大胆な柄付けと相反するような繊細なデザインがただの派手な着物におさまらないものとなっています。それは現代の若者に通づる危うさなのかもしれないです。



ーそして今年はウロコの美しい振袖でした
テーマはファンタジーで、人魚のフォルムを人体に沿って柄を配置した絵羽柄の着物です。裾と袖には美しいグラデーションの鱗柄を描いて、背中から左袖にかけて跳ね上がった尾びれを大胆な構図で配置しました。また右胸には泡となって消えてしまった人魚の泡が立ち上るさまがイメージです。着物に人魚のボディをうつしたような、着ることで人魚姫になれるデザインになっています。


ーキモノハーツとはイベントでのコラボレーションもありました
「Kimono:Kyoto to Catwalk」ですね。(ヨーロッパで初となる大規模の着物展示会。ヴィクトリア&アルバート博物館に現代着物部門にて博物館に永年収蔵される)
これの何がすごかったかというと、その規模を日本でやるなら古典や昔のものを見せてすごいね!で終わってしまうことが多いんですよ。今回のロンドンでは着物の歴史をちゃんと古くから全部みせて、一番最後に現代着物のコーナーまであるんです。その現代着物のところに我々のものが展示されている、というのもので…やっぱり違いますよね
日本だとなかなか理解されるまで時間がかかりますが外国から先に嬉しい反応があったので、それはびっくりしました。
着物と同じようにビヨーク、マドンナ、デヴィットボウイが日本の和装を自分のステージ衣装に取り入れたのものも同列で飾られています。それってすごく光栄だなと。協賛企業の着物が置かれているのではなくて、クリエイターが現代着物を見てチョイスしたものが価値あるものとして置かれています。ちゃんと芸術的な視点をもってみているんだなと感じました、本当はアートとか言いたくないんですけどね。人が着て成立するものなので"商品として"プライドもってやってるので、くくられたくないんですけどものづくりの観点でいうとアート的な思考でものを作るからこそ、そこを理解してくれたのは嬉しかったです。


ーハタチの方々へのメッセージをお願いします
irocaの着物は成人なんてドンピシャです、今の若者に着て欲しいと思っています。悲しいのは成人式って三世代で来店して娘さんは「絶対着たい」で来ますよね、けれど親御さんに理解してもらうという壁があって、それが大きいのもよく分かります。けれど逆におばあちゃんたちの気持ちもすごくよくわかります。「私の帯を使ってほしい」「私の振袖を着せたい」でもあと何十年後にお嬢様が「私の振袖つまんなかった」それは嫌なんですよ。なんでも本人が思うかたちをとらせてあげたい、そこをうまくアプローチして導いて欲しい、なと思っています。しっかり親御さんにもそこを理解してもらえるように取り組んでいきたいですし、これからもものづくりを続けていきます。
ー大変貴重なお話をありがとうございました!
こちらこそありがとうございました。


最後にirocaには振袖以外のアイテムもあり、そちらも素敵なので簡単にご紹介します!
▼蛍光半衿



この半衿は本物の蛍光染料をようやく商品に落とし込めたホンモノのネオンカラーアイテムなんです!水族館やライブ会場にもぴったりです♪
▼半幅帯

▼オーロラ草履

在庫状況にもよりますが、ご希望の商品をご準備することもできます。
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